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現行財産評価基本通達202項改正前(旧法)による評価方法と節税スキーム(2)
- 2017年07月04日
- 旧法で横行していた節税スキームとはこのようなものである。信託受益権の評価を巡っては,以前は8%(改正後4.5%)の複利現価率によるとされてきたことから,市中金利との金利差を利用した節税効果と,信託受益権を複層化した場合の信託評価差損が課税漏れになるといった節税方法が横行していた。具体的には,下記のような事例である。土地1億円,年間地代収入300万円,信託期間が30年の信託契約を想定する。この場合,信託受益権(信託元本)の評価額は1億円として,一方,収益受益権の評価額(300万円(年収益額)×16.288(30年,年4.5%の複利年金現価率=4886万4000円となる。4886万4000円-元本受益権の評価額(1億円(信託受益権の価額×0.267(30年,年4.5%の複利現価率=2670万円。1億円-4886万4000円-2670万円=2443万円6000円。これによると信託分離による信託評価差額2443万円6000円となる。このように改正前の信託受益権の複層化は信託評価差損2443万6000円が発生することになった。
この評価差損は収益受益権,元本受益権のどちらにも帰属しない財産である。これが課税漏れの財産といえると同時に,先述の節税スキームの温床となっていた。この現象は,元本受益権と収益受益権の計算基準の違いによって生じる。というのは,元本受益権は元本(信託受益権)の価額を基準とするに対して,収益受益権は信託財産の年収益額を基準として計算することになるからである。上記の設例では,収益受益権の計算基準である年収益額が4.5%を超える場合には,信託評価差益が生じる。一方,年収益額が4.5%下回る場合には信託評価差損が生じるということである 。そのため,評価基準は先述の通り2回の見直しが行われた。