- トップページ
- >
- 新着情報
~税理士・会計事務所のための~「コンサル質問会」
~全士業・FP・保険営業者・不動産営業者等のための~「税務SOS」
アメリカ法における信託受益権の評価(3)
- 2017年07月17日
- 例えば,受益者の同意を要せず,グランター,受託者及び両者の裁量により,信託の所得が①グランターに分配され,②将来の分配のために保有もしくは積立てられた場合,又は,③グランターの生命保険料の支払いをした場合は,グランターが信託の一部の所有者として取扱われるものとする(内国歳入法典677⒜)。信託は,本来,グランター(委託者)の意思を最も重視して,そのスキームを考えることが本来の信託の利用であるとされているからである。これに該当する要件は委託者に① 財産の復帰権(reversionary interest)がある場合で,財産価値の5%を超える復帰権がある場合。② 受益者が信託からの分配を受け取るものを管理する権限がある場合。③ 委託者への利益の供与又は委託者による信託の支配管理のために,委託者が信託に信託財産を使用させる権限を持つ場合。④ 信託を廃止する権限がある場合。⑤ 所得を受け取る権利が委託者又はその配偶者の権利である場合(内国歳入法典第671条)に掲げる権限等がある場合である。
このグランター・トラストにおける課税方法は,クリフォード事件(Helvering v. Clifford, 309 U.S. 331(1940))における判決から導かれたものである。このクリフォード事件とは,1940 年の連邦最高裁判所によって判決が下されたものである。信託の設定者である夫(甲)が妻(乙)のために証券を信託し,甲を受託者とする信託宣言を行った。信託条項には,信託収益は5 年間で乙のために支払われ,残余権は甲に復帰する旨が定められるとともに,受託者たる甲に広範な裁量権が留保されていた。実質的な内容からみて,信託の支配権や間接的な収益が設定者である甲に留保されているその信託では,甲が所有者としての地位を継続するものと解され,所得税は甲に課税されるべき旨が判断されたというものである。連邦最高裁判所は,特に①この信託というものが短期であり,比較的短期的目的であった。さらに,②委託者の方が支配権,コントロールを留保していた,ということを重視して,信託財産から生じた所得について,夫に帰属するという判断を下している。
- 前の記事
アメリカ法における信託受益権の評価(2) - 次の記事
アメリカ法における信託受益権の評価(4)